古い歴史を持つ剣道ははじめ武術としてその源を発していますが、その後「術」としてではなく「道」すなわち武道として発展し我が国民の精神面に偉大な影響を及ぼして来ました。日本民族にとって切り離すことの出来ない大きな役割を果たしてきたものであります。
その剣道の中に居合道があって、組太刀あり・形があり、総合的に修練されて来たものであることは古い伝書・免許・目録などを見ると明瞭であります。そしてこの武道が主として武士の必須の科目として、日本道徳の一基盤である質実剛健・謙譲礼節・克己廉恥(れんち:清く恥を知る心)の精神を身に着けるべく日々の練磨を通して習得してきたのであります。
このように居合道は、剣道との一体の中で発展してきたものだけに、その流派も大変な数に上り今日まで守り継がれているのであります。昔から居合の達人は剣道の達人でもあり、剣道の達人は居合にも精妙を極めておりました。
明治になってから廃刀令がしかれて以来、常時佩(はい)用しなくなったので次第に人々から刀が遠ざかり、剣道を修行する人々からも離れていって、剣道と居合道とが分化の方向に流れたことは誠に残念であります。一日も早く「剣居一相」の本当の在り方に進むことを望むものであります。
千葉県居合道大会プログラム《初めて居合道を見られる方のために》より抜粋