「居合腰になってすーと障子を明ける、そのまましばらく屋内のようすを聞きすましてから、そっと廊下へ忍び出た。」
これは山本周五郎作『暗がりの乙松』の書き出しの一節ですが、居合腰について実にリアルに表現しています。居合腰については解説書に詳しく説明がありますが、さて山本周五郎先生の説く居合腰をやって見ましょう。
まず、《抜き足》:音を立てないように足をそっと抜き上げる。そして《差し足》: 音を立てないように足をものに差し入れるようにつま先から静かにおろす。そこで自分の姿を悟られないように腰を低く周囲を警戒・見渡しながら《忍び足》: 人に気づかれないようにそっと歩く。一度自分の家の玄関から抜き足・差し足・忍び足と廊下まで入っていってみてください。
実に腰がしっかりと入ります。(否本気で真面目)
山本周五郎先生は池波正太郎や藤沢周平といった後世の歴史小説家に大きな影響を与えた大家でありますが、居合についても造詣が深かったのですね。誠に畏れ入りました。